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le pot au feu (ポトフ)

物件名 le pot au feu (ポトフ)
所在地 東京都中央区銀座3-13-11銀座芦澤ビル1F
主要用途 フレンチレストラン
発注者 個人
延床面積 92.000m2
設計期間 -年-月-日〜-年-月-日
工事期間 -年-月-日〜2004年6月26日
担当 中佐昭夫
構造設計
設備設計
掲載 『商店建築』 2005/4月号 商店建築社
写真 大竹静市郎
「ポトフ」は、ソムリエ暦20年以上のベテランオーナーが経営する本格派のフランス料理店である。もとは築地で営業していたが、諸々の事情で銀座に移転することになった。移転先は銀座マツヤからまっすぐ歩いて昭和通りを越えたところ、ちょうど歌舞伎座の裏側になる。すぐ脇に大手出版社ビルが建っていることもあって、築地に比べると格段に人通りがおおく、客層も幅広くなることが予想できた。

今回の移転にあたり、オーナーはフランス料理店としての既成概念にとらわれない、これまでとは違った店づくりを望んでいた。業態や空間に新しい考えを持ち込んで、それを楽しみながら仕事をしたい、ということである。たとえば厨房を開放した料理教室、店内を広く使っての演奏会、ワイン教室、等々。

そこで私たちが提案したのが、「劇場」というコンセプトである。店の奥にあるオープンキッチンを「ステージ」に、それを見ながら食事するスペースを「客席」に見立てた。客席の床はキッチンから遠ざかるにつれて段々と高くなり、店内全体が劇場のような空間構成を持っている。一番低い段にある客席はキッチン手前の予備ステージにもなり、イベントに活用できる。客席脇には店の入口から奥までつづく細長い通路があり、途中にワイン冷蔵庫や、バーカウンターが備わっている。歌舞伎座で言う「花道」とは違うけれども、入口をくぐったあと、雛壇状になった店内に至るまでの気分を盛り上げる演出空間である。通路と客席は間接照明を仕込んだやわらかな半透明カーテンで仕切り、あくまで開放的な雰囲気を保ちながら、落ち着いて食事ができるように配慮した。

かつてフランス三ツ星で修行したオーナーが采配するサービスと、若いシェフが腕を振るう料理にこだわりがあるからこそ、それを道行く人にも伝えられるようにしたい、そのために劇場のような空間構成が、そのままガラス張りで外からも見えるようになっている。

店のオープン後、実際に通行人の多くが、歩みを緩めて店内を眺めていた。店内でマジックショーが行われた際には立ち止まる人もいた。それはまるで店外の道路にまで客席(立ち見席?)が拡がっているかのようである。この店は銀座という街では新参者だが、そうやって徐々に街との関係を築いてゆけるのではないかと感じている。

-中佐昭夫-

 

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