これは、組み立て→解体→運搬(収納)→組み立てという各工程を、可能な限り容易に作業できるようにデザインされた、モバイルタイプの売店ユニットである。全ての工程において、最低2人で作業が行えるように、部材の形状、寸法、材料、ディテール等を決定している。
全体構成としては、乾式工法の基礎の上に、人力で運べる程度の重量になるようデザインされた異形三角錐の自立する丸パイプの柱を、φ22丸鋼による引張力だけで完成させるビームレスのスチールフレームをメイン構造とし、これに工場であらかじめ直方体に縫製されたテント膜(W7.2m×D3.6m×H2.7m)を張り込み、遮熱性能を高めるために、屋根にはさらに遮光性のテント膜でおおいをして、空間が完成される。
まず、組み立て作業における最大の特徴は、横架材をなくしテンション材だけでスチールフレームを安定させる構造としたことである。通常は、2本以上の柱をいったん仮留めしておいてそれに横架材をかける。この横架材をかけるときに高い位置に持ち上げないといけないという作業に大きな力が必要になる。これらのことを考慮し、安定して自立する異形三角錐の柱をあらかじめ全てセッティングしておいて、それらに対してX・Y・Zの全ての方向からφ22丸鋼をつなぎ、ターンバックルで引張力をかけることで構造を完成させている。
乾式の基礎は、通常フェンスなどの基礎として利用されている既製品の基礎ブロック(W400×D400×H400)を1,820mmピッチで置いて、その上に100×100のH鋼を載せ、2-M16のケミカルアンカーボルトでつなぐことで基礎が完成する。この基礎フレームの空間を使って、露出配管スペースにも利用している。
この売店は、場所を変えて利用されることが想定されているので、解体・運搬(収納)についても省力化を図るための工夫が施されている。先にも述べたが、空間を覆っているテントは、ダブルルーフの屋根材と本体部分の2つのテント膜が、スチールフレームに紐で結ばれているだけなので、それをほどけば2枚のシートにたたんで運搬することが出来る。基礎ブロック、スチールフレームも全てボルト締めで固定されているので、それをゆるめれば全て元の部材に分解できる。
運搬するときに一番問題となるのが、三角錐の柱である。後の部材は全て線形の部材なので効率よくトラックに積載できるのだが、このユニットシステムの柱は置くだけで自立するような形状にする必要があったので、柱の足下を三点で固定できるよう末広がりな形が想定された。しかしそのままだと収納したときに無駄にスペースを取ってしまうので、椅子などの収納時に使われるスタッキングという機能を持たせようと考えた。その結果、このような1本の丸パイプを曲げることで出来る異形三角錐という形状の柱にたどり着いた。