物件名 | : | 町田自然幼稚園E棟 | |
所在地 | : | 東京都町田市忠生2-7-5 | |
主要用途 | : | 幼稚園 | |
発注者 | : | 齋藤祐善/学校法人正和学園理事長 | |
公式サイト | : | 町田自然幼稚園、正和学園 | |
用途地域 | : | 第二種中高層住居専用地域、第二種高度地区、準防火地域 | |
構造 | : | 木造 | |
階数 | : | 地上1階 | |
最高高さ | : | – | |
最高軒高 | : | – | |
前面道路 | : | 南側6.000m | |
敷地面積 | : | 4692.530m2 | |
建築面積 | : | – | |
延床面積 | : | 374.090m2 | |
設計期間 | : | 2002年10月26日〜2003年2月8日 | |
工事期間 | : | 2003年2月9日〜2003年4月30日 | |
担当 | : | 中佐昭夫 | |
構造設計 | : | 草間徳朗/草間構造設計室 | |
設備設計 | : | – | |
施工 | : | 大倉建築 | |
掲載 | : | 『建築知識』 2013/6月号エクスナレッジ | |
: | 『Kindergartens』 2011/1月出版 Braun Publishing | ||
: | 『architecture for children』 2010/10月出版 ACER | ||
: | 『日経アーキテクチュア』 2009/3/9号 日経BP社 | ||
受賞 | : | 2006年 GOOD DESIGN賞建築・環境デザイン部門入賞 | |
2009年 日本建築家協会優秀建築選 | |||
写真 | : | 大竹静市郎 | |
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町田自然幼稚園は、1600坪に及ぶ緑ゆたかな敷地と、そこに点在する低層の建物群で構成されている。園内は樹木が立ち並ぶ傾斜地で、木漏れ日の中を園児達は駆け回り、昆虫を捕まえたり、木の実を集めたり、東京都心では得難い自然に存分に親しんでいる。 恵まれた自然環境がこの幼稚園の特長である一方、そこにある建物群の多くは老朽化して不具合を生じていた。また幼稚園をめぐる制度改革が近年になって急激に進行する中で、園児の居場所として建物がどうあるべきか、明確な方向性が決められていなかった。 これらの問題をすべて一度に解決するのは不可能な状況だったため、10年先を見据えたマスタープランを作成し、点在する建物をそれに沿って少しずつ改修してゆくことになった。 最初に取りかかったのは、傾斜敷地の低い場所にある切妻屋根の建物である。柱を残してほとんどすべての壁を除去したうえ、一方の妻側から反対の妻側に至る「廊下」を建物中央に通し、その両脇に6つの保育室を配置する平面へとレイアウト変更した。保育室はそれぞれ異なった平面形状と性格をもつ。例えば<サンルームのある部屋><キッチンコーナーのある部屋>などである。 「廊下」は全面ガラス入りの引戸で構成し、保育室を見渡すことができるようにした。これには、閉鎖的になりがちな保育の現場を園児の親や見学者に対して解放し、信頼や理解をより深めるという狙いがある。園児の目の高さのガラスには様々な色付きのフィルムを貼り、それらが重なると違った色に見えるようにした。立つ位置や歩くスピードによって、園児達の目に映る景色が変化する。ガラス越しに互いの姿を見て、自然と鬼ごっこが始まったり、おもむろに戸を開けて覗き込んでみたりしている。全面ガラス入りの引戸は、園児達の交流や想像を促す装置である。色付きフィルムを貼る以外にも、様々な活用方法が考えられるだろう。 傾斜敷地の下側から幼稚園内へ入って進むと、この切妻屋根の建物の前を最初に通ることになるのだが、これにそって細長い「エントランスホール」を設け、「廊下」と直交させた。光と風を取り入れながら雨をしのぐ大きな庇である。改修前から、その場所には園児・先生・外来者が多く行き交う動線が自然発生していたので、そこに<たまり場>をつくる意図があった。 これら「廊下」「エントランスホール」は、その名が示す機能を果たすだけのものではない。むしろ、かつて日本中のどこにでもあったという子供の遊び場としての<路地>のイメージの方が近いと考えている。自動車による交通事故が起きない幼稚園敷地内の動線は、比較的安全な遊び場になり得るのではないだろうか。 10年先を見据えたマスタープランは、園児の増減や幼稚園制度改革を受けて変更になる可能性が高い。しかし、園児の遊び場としての<路地>をつくるという方法は、変わらず有効な手段であり続けるだろう。 -中佐昭夫- |