物件名 | : | メープル Gym 1st | |
所在地 | : | 福島県福島市曽根田町3-17 | |
主要用途 | : | デイサービス | |
発注者 | : | TBSホールディングス | |
公式サイト | : | メープル Gym 1st | |
用途地域 | : | 準工業地域 | |
構造 | : | 木造 | |
階数 | : | 地上1階 | |
最高高さ | : | 5.498m | |
最高軒高 | : | 4.130m | |
前面道路 | : | 東側17.980m | |
敷地面積 | : | 1138.220m2 | |
建築面積 | : | 459.490m2 | |
延床面積 | : | 447.540m2 | |
設計期間 | : | 2018年9月19日〜2019年9月17日 | |
工事期間 | : | 2019年9月18日〜2020年3月18日 | |
担当 | : | 中佐昭夫、平岡諒太 | |
構造設計 | : | 森永信行/mono | |
設備設計 | : | 浅野光、池田匠/設備計画 | |
施工 | : | 佐藤工業 | |
写真 | : | 矢野紀行 | |
ステージ状の機能訓練室があるフィットネス型のデイサービス。 もとの敷地は幅の広い道路に面した駐車場で、地面は道路から奥に向かって緩やかな上り勾配だった。仮に奥に長い建物をそこに配置して、エントランスを奥につくり、室内に入ってから手前に戻ってくると徐々に床と地面が離れてゆく。その結果として道路側では約1mの段差ができる状況だ。 道路側から見ると、それは高さ1mのステージのようにも見えるはずで、そこがフィットネスの場になるとちょうどいいのではないかと考えた。建物内外の視線がぶつかるのを軽減できるし、なにより室内からの眺めがいい。デイサービスなのでバリアフリーは必須だが、エントランスまでは送迎車でアプローチし、そこから室内に入り、道路側に向かってフラットな床を移動すれば、バリアフリーのままで1mの高さに立つことができる。 厚生労働省の定義によれば、デイサービスは「生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持(中略)を図るものでなければならない。」とされている。デイサービスにはさまざまなタイプがあるが、窓に厚いカーテンがかかって閉鎖的な雰囲気で、しかもじっと座っていることが多くなるような活動内容だと、通うごとにむしろ心身の機能の維持が難しくなってしまう。 そこに問題意識を抱いている建主は、利用者に元気や活力を提供できるような場とするべくフィットネス型に焦点を絞っていた。建築としては、それに相応しいつくりが必要だった。 利用者のほとんどが車でやってくるため、道路からの乗り入れを2箇所つくり、エントランスで乗降したら建物外周をぐるりと回って出られるドライブスルー型を考えた。建物の周囲に車が通れるようなスペースを確保することになるが、それによってむしろ建物が敷地の中央に置かれ、建物の床は、コンサートホールで例えるならアリーナ型のステージのようになる。 フィットネスの場である機能訓練室はガラス張りとし、室内からの眺めができるだけ遮られないようにガラス面の耐力壁は取りやめて、代わりに室内中央に設けた組柱で必要な耐力を確保できるように検討した。結果として、組柱と上部の長い梁が一体化したT型の構造体を3640mm間隔で5本連続させることで、開放的で透明感のある機能訓練室を成立させている。 長い梁には照明器具を沿わせてあり、日が暮れてから点灯させると、T型の構造体が浮かび上がる。木目を見せるクリア塗装で仕上げていることと相まって、外部からみるとステージ状の機能訓練室は昼間と違った印象で目に映る。近年は各省庁をはじめ、日本全体で木造の再評価や可能性追求が求められているが、ますます進行する超高齢社会の受け皿であるデイサービスにおいてこそ、木造を積極的に採用し、象徴的に表現できればと考えた。 ガラス面には濃淡のある数種類のロールスクリーンを設置している。利用状況に応じて上げ下げすると、それによって建物の表情を変化させることができ、日差しやプライバシーへの配慮にもなる。劇場のステージには演出を調整するために緞帳(どんちょう)など様々な幕が設置されているが、それに似た機能と言えるかもしれない。 デイサービスの利用対象は65歳以上の高齢者だが、十数年もすると日本の人口の1/3がそれに該当するようになる。人生100年時代と言われるなか、建築のつくりによって高齢者の活力を少しでも支えられたらと願っている。 -中佐昭夫- |