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三次市農業交流連携拠点施設 トレッタみよし

物件名 三次市農業交流連携拠点施設 トレッタみよし
所在地 広島県三次市東酒屋町438
主要用途 物販販売業を含む店舗
発注者 三次市
公式サイト 三次市農業交流連携拠点施設 トレッタみよし
用途地域
構造 木造
階数 地上1階
最高高さ
最高軒高
前面道路
敷地面積
建築面積 908.400m2
延床面積 863.470m2
設計期間
工事期間 2014年6月〜2015年3月
担当 中薗哲也
構造設計
設備設計
施工
写真 新建築社写真部
 

“多様に産業が花ひらくまち三次”を象徴する“木花”

平成27年3月22日、中国横断自動車道 尾道松江線(中国やまなみ街道)が全線開通した。この日は、尾道松江線(中国やまなみ街道)と中国縦貫自動車道が、島根県と広島県のちょうど中間地点に位置する三次市で接続し、さらに尾道市から西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ街道)と連結して、山陰~山陽~四国が一つにつながり、日本海・瀬戸内海・太平洋という3つの海を結ぶ壮大な周遊ルートが完成した瞬間でもあった。この日の前日、3月21日に三次市農業交流連携拠点施設トレッタみよしは落成した。

このように壮大な道路網の結節点にあり、近年全国的に整備されてきた「道の駅」ではなく、三次市の農林畜産業などの活力を強化するために農・商・工が連携を図るための拠点施設として整備された施設である。

主な用途は、農産物・工芸品売場、調理体験工房、パン工房、飲食施設、情報コーナー、デッキテラス、芝生広場等が計画されている。産品売場の充実だけではなく、調理体験工房の設置また調理現場の見える化により、生産者と消費者が交流できる施設とすることで、オール三次の生産力強化を目指している。

三次市は山間地という立地と気候風土の特性から、林業や葡萄をはじめ果物の生産も盛んで、敷地の近くには広大な葡萄畑がひろがっている。
樹木が成長し、枝を伸ばし、葉が大地を覆った空の下、人々が集い、くつろぎ、交流している風景がまず頭に浮かんだ。メインの売場空間を、枝や葉が折り重なるように木材を上下2段に重ねた大屋根で覆う。またその大屋根は、自然に伸びた幹や枝のように四方自由に展開する杉丸太斜め組柱“木花”で支える。このように“木花”は三次市の象徴であり、この施設の核となる。また柱はその性質上、梁と違って誰でも手に触れられる存在である。また敷地周辺は杉林で囲われている。特に“木花”についてはプロポーザル段階から三次産の杉材にこだわった。

敷地が三次市の主要施設である三次ワイナリー、みよし運動公園、奥田元宋・小由女美術館が隣接する交差点の一角に位置することから、施設の主用途である農産物等売場・パン工房・情報コーナー・エントランス・飲食施設・デッキテラスを、周辺環境に対し放射状に展開する構成とした。これらを包み込むように架けられた大屋根は、夕刻になると“木花”中心部に設置されたあかりに照らされ、時折“げんそうの赤”に染まった空に浮遊するように存在する。
この施設は、三次の産業がこれから多様に展開し活力を高めていく様を見守りながら、地域の人々からも命を吹き込んでもらうことで、三次の地に寄り添う、愛らしい建築に成長していくことだろう。

木造のあるべき姿

三次市は山間地という立地と気候風土の特性から林業が盛んで、広島県の総合技術研究所林業技術センターも昭和45年からこの地にある。また、葡萄をはじめ果物の生産も盛んで、敷地の近くに広大な葡萄畑がひろがっている。ぶどうの里・ワインの里と呼ばれる由縁でもある。

幹が成長し、枝を伸ばし、葉が大地を覆った空の下、人々が集い、くつろぎ、交流している風景が浮かんだ。メインの農産物等売場を、枝や葉が折り重なるように木材を上下2段に重ねた大屋根で覆う。またその大屋根は、自然に伸びた幹や枝のように四方自由に展開する組柱“木花”で支える。このように“木花”は三次市の象徴であり、この施設の核となる。また柱はその性質上、梁と違って誰でも手に触れられる位置にある。また敷地周辺は杉林で囲われている。特に“木花”についてはプロポーザル段階から三次産の杉材にこだわった。

木造のあるべき姿とは何か。その土地の気候風土の中で人と同じ水や空気を吸って生きてきた材で、さらにその生きてきたままの立ち姿で空間を支える佇まいが凛として清々しい。壁に因らない柱―梁による地産材の軸組工法。これがより自然で美しい木造の在り方だと思っている。

-中薗哲也-

 

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