物件名 | : | 住田屋焼山店 | |
所在地 | : | 広島県呉市焼山中央3丁目13-33 | |
主要用途 | : | 酒販店 | |
用途地域 | : | 第二種住居地域、防火指定なし | |
構造 | : | 鉄骨造 | |
階数 | : | 地上2階 | |
最高高さ | : | 9.592m | |
最高軒高 | : | 8.982m | |
前面道路 | : | 南側16.000m 西側16.000m | |
敷地面積 | : | 1,389.800m2 | |
建築面積 | : | 510.520m2 | |
延床面積 | : | 558.390m2 | |
設計期間 | : | -年-月-日〜-年-月-日 | |
工事期間 | : | -年-月-日〜2008年10月6日 | |
担当 | : | 中薗哲也 | |
構造設計 | : | – | |
設備設計 | : | – | |
写真 | : | 矢野紀行 | |
受賞 | : | 第14回(平成21年度)呉市「美しい街づくり賞」(たてもの部門) | |
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この建物は、お酒の小売業を営むための店舗で、床面積約560平方メートルの鉄骨造2階建ての規模をもつ。設計する際に求められたのは、地域のランドマーク的な存在感を呈しつつ、お酒に大敵の熱からの影響を極力小さくすることであった。一年を通して室内温度を出来るだけ一定に保ち、また、西日を極力遮ることが求められた。しかも、非常に限られた予算の中でこれらの機能を満足させる必要があった。 西日に対しては、建物の西側外壁面にも商品が陳列されるので、外壁面から西側に向かって敷地境界ぎりぎりまで庇を延ばすことにした。その長さは一番長いところで12mのキャンチレバーになっている。また、かえってその軒の深さから暗く陰気な空間にならないように、庇の屋根は透明ポリカーボネートの折板とし、軒裏は1枚に縫製された半透明の大きなテント膜で覆うことで、軒下空間をやわらかい均一な光で満たすことができている。 内部空間については、レイアウト上、お酒は全ての外壁に沿って並べられるので、外壁の遮熱・断熱性能は特に重要になると考えられた。 そこで外壁は、波板透明ポリカーボネートを使用し、敢えてその外壁には光を透過させ、雨・風の進入を防ぐための機能のみを期待し、その背後に120mmの通気層(間柱部分に相当する)を設け、透湿遮熱断熱シートを間柱に室内側から留めている。さらにその上から白色の不燃材であるガラスクロスを額貼りした25mm厚のグラスウールボードを天井面も含めてボタン留め工法による全面貼りとした。透明ポリカーボネートを通過した日射は、透湿遮熱断熱シートで反射され120mmの通気層により上昇気流によって屋根面附近から外気へ放出されるという仕組みになっている。 屋根面についても、屋根材がガルバリウム鋼板の折板であることを除けば、まったく同じ仕組みの断面構成(遮熱通気工法)としている。 外壁は透明ポリカーボネートで覆われているため、銀色の透湿遮熱断熱シートも外壁下地材・通気槽を形成している60mm×120mmの間柱も全て外部から見えるようになっている。これらの材料は本来、仕上げ材として使用されるものではないので、非常に安価な材料である。透明な外壁材で建物を多い、本来隠れるはずの構造材、下地材全てが外から見えるスケルトン構造となっている。お酒に大きな影響を与える熱をどのように遮り、それをどのように逃がし、内部空間をどのように断熱しているのかが明快に表現されている。これ以上そぎ落とすことが出来ないというレベルまで建築要素をそぎ落とし、それらの明快でシンプルな構造が、この店を訪れた人だけでなく、周辺の誰でもが外から見えるようになっている。 この建物は、特別に装飾しているわけでも、特別な形体を故意に操作しているわけでもないが、明快でかつ、建築物として最小限の要素まで削がれたストイックな姿が、原始的な建築物が持つような力強い実直な佇まいからくる、研ぎ澄まされた繊細なイメージを与えている。 -中薗哲也-
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